『TPP亡国論』 中野剛志著、集英社新書

| EDIT

TPPについて考えたい?
『TPP亡国論』 中野剛志著


TPP参加へのスタンス ★★★★★

TPP参加反対の代表的論客と化してきた中野剛志のTPP亡国論を読んでみた。ちなみに中野氏は経産省から京都大学に出向している身分であり、本来賛成の立場にあってもおかしくないだけに、そのエキセントリックな言動と合わせ、不気味な存在感を醸し出している。




第一章 TPPの謎を解く
第二章 世界の構造変化を読む
第三章 貿易の意味を問い直す
第四章 輸出主導の成長を疑う
第五章 グローバル化した世界で戦略的に考える
第六章 真の開国を願う

TPPの細部をネチネチ攻めるのではなく、

① デフレを加速させるTPPの前にデフレ脱却が先だろう!
② TPPに参加してもドル安を進めるアメリカ向けには輸出出来ない!
③ アメリカが狙う対日農産物輸出の増大は危険だ!


の3点に絞った内容になっている。

まず、デフレ脱却が先だろう!という点には全く賛成である。ただ、TPPを含め自由貿易そのものがデフレを進めるという意見はどうだろう?安い農産物や牛肉が入ってくる → 吉野家が値下げする → 他の外食産業も値下げ追随 → 人件費削らないといけない → 他の産業にも影響出る → デフレが進む!という論理だ。まず、安い食料品が輸入されたとした場合、月に20万円の所得がある人ならエンゲル係数が下がってその分他の消費に回るのでは?さすがに吉野家の値下げに刺激されて、消費を抑えよう(=デフレ化)という動きにはならないだろう。あるいは、食料品が下がることにより物価の下落が進み、20万円の所得が18万円に下がる程の影響があるだろうか?とにかく、デフレの問題はこれはこれで解決しなければ日本の復活はないので、解決させないといけない最大の問題であることには大賛成だが、TPPとは関係ないと思う。ちなみにデフレ脱却のため、どんどん財政支出をするべきだ!という意見には賛成。(この本では、“がんがん国債を発行し、がんがん公共事業するべきだ!”という結構乱暴な書き方^^)また、当面、日本はギリシャのようにはならない、日銀が国債を買えば良いという意見にも賛成だ。

次にいくらTPPに参加してもアメリカ向け輸出が伸びない!という点だ。まず、どのTPP反対の本にも書かれているが、GDPで比較すると日米で全参加国の9割を占める。日本が24%、アメリカが67%、そして残りの10%弱の半分をオーストラリア、そして後の7か国でその半分(5%弱)となる。これだけ見ると確かにTPP賛成論者が唱える”アジアの成長を日本に取り込む!”というのがいかに意味のないことなのか?と言われると確かに説得力がある気もしてしまう。結局日本にとって期待できる輸出先はアメリカだけだが、そのアメリカの目的はあくまで国内の雇用を守るための輸出の倍増であり、TPPに参加しても日本は逆にアメリカ含め、他のTPP参加国からの輸入が増えるだけであるとの論理だ。ただ、GDPベースでは小さな国であっても日本としては様々な工業製品を輸出しており、またそれらの国から既に農産物や鉄鉱石他の鉱物資源を輸入している。既にそれらの関税は高くない。逆にTPPにより、投資環境の内外差別がなくなれば、日本がチリの鉱山に投資するなどというケースでのリスク低減になり、資源確保という意味でメリットがあるのでは?と期待する。でも、やっぱり2.5%でもアメリカの自動車向け関税なくなれば、輸出にはメリットになるだろう。少なくともウォン安武器に輸出攻勢をかける韓国車との競争においてはないよりマシであろう。
そもそも、デフレ問題にも通じるが、TPP参加の是非と関係なく、日本も金融緩和&財政出動をし、デフレ脱却(緩やかなインフレへ)&円安にもっていき、経済成長が必要だろう。これもTPP参加とは別の問題だ。

長くなったが、最後にアメリカからの農産物が大量に輸入される!ことだが、中野氏としては旱魃の際などに高値で買わないといけなくなるリスクだけでなく、最悪、アメリカが穀物の国内向けを優先し、輸出禁止などのリスクもある!と説いている。賛成/反対問わずTPP本全てに言えることかもしれないが、数あるデータを都合の良い形で引用している気がする。この本でも既に日本の関税は低く、農産物に限っても平均関税率12%は高いとは言えないとしながら、TPPに参加すれば更にアメリカからの農産物が大量に入ってくると言う。というより、既に入ってきているのでは?

これまた、農業問題についてもTPP云々というより、今後日本の農業をどう維持・発展させていくか?というTPPとは別の問題だ。

というわけで3点ともTPP反対の理由として論じてはいるが、参加するしないにかかわらず、日本が手を打たないといけない問題であって、TPP反対の理由にはならないという気がした。

スポンサーサイト
Category: 書評
↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。